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岡崎好秀
岡山大学・医学部・歯学部附属病院 小児歯科
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▲食べる意欲と幼稚園での生活 (1)
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ある幼稚園で,昼食時の食事場面と, 園での生活状態について先生に観察していただいた。 その結果をクロス集計したところ面白い結果が得られた。 まず,食べる意欲のある園児は, 1.積極的である 2.休み時間みんなと遊ぶ 3.友達が多い |
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▲食べる意欲と幼稚園での生活 (2)
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4.健康である 5.椅子に座る姿勢が良い 6.規則を守る 7.運動能力が高いなど 園での生活面において,すべての項目で好ましい傾向にあった。 一方,意欲の乏しい園児は,さまざまな問題がみられた |
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どうしてこのような結果になったのだろうか? さて“マズローの心理学”と呼ばれる心理学がある。 別名,“成功の心理学”とも呼ばれている。 彼は,これまで成功してきた方が, どのような心理経過を経てきたかについて調査した。 その結果,5段階の欲求があると述べている。 第1段階は,睡眠・食べること・排泄であり,これを基本的欲求である。 第2段階は,安全の欲求。 続いて第3段階は,愛と所属の欲求。 4段階は,他者からの承認(他者から認められること・尊敬されること)の欲求。 そして,最後には自己実現の欲求 (自分の能力、可能性を発揮し、創造的活動や自己成長を追求する)がある。 |
![]() ▲マズローは,5段階の欲求があるとしている。
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そして,下位の欲求が満たされた時,次の欲求を目指すとしている。 ここで食べることは,もっとも基本的な欲求である。 さて,現在の子ども達を取り巻く食生活はどうだろう? いま日本中の子ども達は,便利で豊かな生活を享受されている反面、 遊ぶ時間と場所,それに空腹感を奪われている。 空腹感の欠如が,食べるという基本的な欲求を奪っているのではないか。 マズローの説では,基本的欲求に問題があれば自己実現などありえない。 幼稚園児の食べる意欲と生活習慣との調査結果もこのことを暗示しているのだろう。 |
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食欲を満たすことは,人間にとって最も基本的な欲求である。 人間は腹を満たすために、色々な道具を発明し使用し、進化してきた。 その過程では絶えず空腹感との戦いがあったのだろう。 空腹感に耐えることが,生きるための活力となってきたのではないかと思う。 食べ物があり余り、空腹感を経験したことのない子ども達はどう育っていくのだろう? 子どもには,もっと空腹感を与えることが必要だと思う。 |
![]() ない子ども達はどうなるのだろう? |