エピソードを使った保健指導
〜宿題集〜2000年〜



宿題の趣旨

今回の目玉は,「エピソードを使った保健指導」です。理論整然とした保健指導なんて聞きたくありません。「おやつのダラダラ食いをやめましょう!」と言っても「でも,おばあちゃんが甘いものをあげるので・・。」「お兄ちゃんが食べるので…。」等と理由で上手くいきません。また「1日1回寝る前だけは,歯を磨きましょう!」と言っても「嫌がるので・・。」「自分で磨く・・。」等など…・。 そんな時,相手の心を動かせ勇気付けるのは,貴方のエピソード話です。 自分の経験や失敗談,あるいは患者さんから聞いた話し等からこのように話しをしたら 上手いった例など,患者さんを動かしたエピソードを持ち寄って出し合いましょう。
(以下  保健指導の達人 岡崎好秀著    今春出版予定より一部引用)


―共感するということー習癖となった指しゃぶりへの対応―
アキちゃん:指しゃぶりをどうしても中止させなければならない場合は,どんなお話をしているのですか?
マコト先生:まず共感することだ。
アキちゃん:共感の重要性については,さまざまな本に書かれていますね。
マコト先生:だけど頭の上だけでの共感は,すぐに相手にわかってしまう。
アキちゃん:共感したふりをするのは,簡単ですからね。
マコト先生:共感するのは,頭ではなく心でするものだ。
アキちゃん:別の章でも保健指導の基本は,相手の頭に話すのではなく,心に向かって話をすると言っていましたね。それでは読者の方が理解しやすいように,共感の実例を教えてください。
マコト先生:1:内緒の話だけれどね・・。実は私も〇〇ちゃんと同じ年の頃,指しゃぶりをしていたの・・。だけど,大きくなったら自然に治ったわ!
アキちゃん:なるほど!まず自分の経験談を出して共感するのね。しかも"内緒だけれど…。"って言うのが良いですね。
マコト先生:内緒話は,二人だけの秘密を共有できるからね。
アキちゃん:先日,服を買いに行って店員さんに「これは人気の商品で飛ぶように売れて,最後の一品になってしまいました。」と小声でささやかれたので,思わず買ってしまいました。
マコト先生:患者さんが聞きたいのは,理論整然とした内容ではなくて,経験談だからね。
アキちゃん:しかも"大きくなったら治る"という言葉が大事ですね。
マコト先生:"〇歳になったら治った。"とか"おにいちゃんになったら治った。"とか近未来の設定にすればよい。
アキちゃん:"そうか!お兄ちゃんになったら,治るのか! ボク,もうお兄ちゃんだから頑張ろう・・。"と思ってくくればよいのですね。
マコト先生:野菜嫌い等の児でも,これを野菜に置き換えれば簡単だね。
アキちゃん:ところで指しゃぶりから舌習癖がでて開咬になると筋機能療法を行ないますが,筋機能療法のモチベーションは難しいですね。
マコト先生:小学校の低学年より高学年になると難しいね。こでも自分の経験があれば,経験を活かすとイイね。
2:私も指しゃぶりをしていて,歯並びが悪かったの。歯が出ていることを気にしていたわ。歯が出ていると,うどんやそばが前歯で咬み切れないでしょ。(ちなみに下顎前突では,リンゴの丸かじりが出来ない。)こんなこと歯並びの良い人にはわからないものね。だから私も訓練をしていたの。毎日続けていたから,こんなに良くなったわ。毎日たいへんだったけれど,今では本当に良かったと思っているわ。
マコト先生:歯並びが悪かったら言えませんね。
:でも自分の経験がなければ,どうすればよいのですか?
マコト先生:第3者を例にしても良いと思う。たとえば同僚の歯科衛生士でも良いだろうし,院長でも良いと思う。エピソードを聞いて集めればよいと思う。
…と言うことで,以下宿題集です。







宮西 祥江
入れ歯を全く洗わないじいちゃん,ばあちゃんに入れ歯のてんぷらのなっているから洗ってね。といえば洗ってもらえました


荒木 眞須美(歯科衛生士)
妊婦教室での話
私が学生の頃,ある開業医の先生が,歯科衛生士は女性だからいずれ母親になり子供を産む。そのためには「いりこを毎日食べろ,食べろ。」と毎回講義のたびに言ってました。
卒業すれば勉強したことは忘れるからこれだけは覚えておくようにと,「いりこを食べろ一」と何度も繰り返すのです。卒業後,私は先生に言われたことをきちんと守り勉強したことはほとんど覚えていませんが「いりこを食べろ一」だけは何年経っても頭の中に残っており妊娠中はいりこを一生懸命食べ離乳食にも使いました。(おかゆにいれて)
おかげで娘3人いりこ大好きっこです。この話を妊婦教室で話すと納得してくれます。



若林 幸恵
小1の女の子のはなし 早期発見,早期治療は大切
6歳臼歯萌出途中,母親が入院し仕上げ磨きができなくなったので父親に頼みましたが結局実施しませんでした。祖父母も同居で食生活も乱れていたためか,10日間で幼若永久歯はCOになってしまいました。歯科医師に相談した結果咬合面の清掃とシ−ラントを行い仕上げ磨きを行いました。白濁は消失し現在高3受験生ですがオ−ル健全歯です。

夫婦は仲良し,虫歯は感染症って本当
妻は処置完了ではありますが,人並み以上に虫歯がありました.
夫は全歯牙健全歯。歯周炎,歯肉炎もなくとても美しい歯並びでした
2人は結ばれ,仲良い夫婦です。1年ほどして,夫は虫歯が臼歯部に出来,それから数本出来てしまいました。



馬場 直子(歯科衛生士)
中学生や高校生の子って私が見る限り口腔内が汚れていることが事が多い
目に見えないところをきれいにするより,見えるところをしか関心がないとおもいます。
(わたしもそうだった)そういう子達に対するエピソ−ド。

私が高校生の色気がついた頃,片思い中の男の子にドキドキしながらにこっとあいさつしたら「歯になんかついとるで」といわれて急いで鏡を見ると右上45歯頚部あたりに黒いものが・・・そしてその顔の間抜け面といったら・・・わかりやすくいうと歯にごまがついていたりワカメがついている状態。
しかもそれがなかなかすぐにとれない。そして泣く泣く一日過ごして(その日は笑えなかった.)歯医者さんに行くと「歯石ですねと一言」取ってもらってきれいにしてもらったけれど好きな人にあの間抜け面を見られたという過去はのこったまま。
その故意は結局うまくいかなかったけど,ま,それが間抜け面のせいなのかどうかはわからないけれど,この事件のおかげで口の中に関心を持ったよ。
目に見えないところも普段からきれいにしていないと,いつどんな時どんな所でボロが出るか分からないから気をつけようね。



青木 圭子(歯科衛生士)
Kr.きららちゃん5歳5ヶ月
もうすぐ6歳にしては小柄で手足が細く折れてしまいそう。
顔は面長でまるで大人のように顎がとがっているのである。
下顎のAAが翼状捻転しており並びきらないでいる。きららちゃんの雰囲気はとてもおとなしい元気がないどうしてこんなに細いのといったかんじである。
きららちゃんに話し掛けてみた。何歳なの?今日幼稚園でなにしたの?何が好き?歯磨きは自分でするの?答えがなかなか返ってこない。待っているとお母さんがしびれをきらし答えが返ってくる。カリエスはなくOHIも良い
保健指導のためというより子供なのにどうしてこんなによわよわしいのか不思議に思いどんな食事をしているのか聞いてみた。
魚より肉が好き。生野菜はほとんど食べない,肉じゃがなど味のついた煮込み野菜は食べる.。ジュ−スはほとんどの飲まない
まだ納得がいかない食が細いのでとお母さんはいう食事の時間が楽しくなるようにと提案してみた。するとお母さんが驚くことを話し出した.。それはきららちゃんは食べるのが遅くはっきりしないのでお父さんがいらいらして怒り出す.。きららちゃんはおびえてもっと食べなくなってしまう。という内容だった。これだあと思った。
お母さんにきららちゃんのペ−スを考えて待って欲しいと伝えた。野菜は体を元気にしてくれるからちょっとずつ食べてねと伝えた。ゆっくりうなずいただけだった。
私はもう一つ何かきっかけになるものがあればと考えてみた。
幼稚園では動物を飼っているそこで身近な生き物がおいしそうに野菜を食べているのを実際見ることが出来ればきららちゃんとリンクすることが出来ると考えた。きららちゃん,ハムスタ−と金魚を飼っているという「何を食べているの?」きららちゃん「わからない」
次回までの宿題とした。
次回はTBIとFを行った。宿題について聞いて見る。
ハムスタ−と金魚は何を食べていた?答えは笑顔ですぐ返ってきた。こんなにスム−ズに会話が出来るじゃない。なぜいつもはいきずまってしまうのか。ハムスタ−はね-向日葵の種ときゅうりとりんご。金魚は金魚のえさ,うさぎはにんじんときゃべつ
「おいしそうにたべていた?」「うん」ライオンは?犬は?象は?と他の動物についてもジェスチャ−や絵をかいて興味を引きながら話を進めた。お母さんが看護婦さんも幼稚園の先生と同じように絵をかくのね,と。
ふ〜ん幼稚園の先生はそうやってこどものこころをつかむのね。
それから驚いたことが。前回の来院の日から生野菜を食べるようになったとか。きゅうり
にんじん,サンドイッチの野菜と答えははっきりしている。
偉い。すごくほめた。にんじんはよくかんでいたらどういう味がした?食べ物は噛めば甘さが出てきておいしさがわかる。生野菜は食べずらいし噛まないとの見込めないし味も分かりずらいせかされて食べていたので噛まないと飲み込めないし味も分かりずらい。
せかされて食べていたので食べずらい物は食べなくなってしまったのかもしれない。
お母さんにどんな食べ方をしているのか再度聞いて見るとたべやすく小さく切っていたようだ。あまりかまなくてもいいように。
今までの事を整理してみると噛まなくても食べやすい肉がよく味の濃い煮物のほうがおいしく感じられたのだろう。
きららちゃん。これから噛んで味わって食べることそして楽しいことになってね。
保健指導って難しい。けれど楽しい。



町田 真奈美(歯科衛生士)
私自身の口腔内を利用して保健指導のお話をさせていただきます。
私は仕事柄,一般の方々対象の保健指導ではなく臨床に出ている衛生士さん,小学校,幼稚園の擁護教員のみなさまに話する機会が多くあります。ですが,みなさまのどこかに「磨いても加齢と共に歯周病になるのは仕方がない」と思われている様子です。また指導する側にも,どこか,ブラッシングに対して迷いがあれば敏感な患者さんはすぐにそこを察知して話を聞いてくれません。私自身も臨床にいた時「あなたの口だってぐちゃぐちゃなのに指導されたくない」といわれたことがありました。当時はその言葉だけにショックを受けましたが,今なら「そうですね歯列がバラバラでハブラシが難しいですがそれでも歯周病になっていませんよ」といえます。このことをお話するとみなさんほっとしたい顔になります。私自身これが保健指導かわかりませんが。受講していただく時皆様の笑顔が出る時が最高の幸せです。



田口 克子(歯科衛生士)
訪問歯科指導の場では,歯を磨くという行為はなかなか受け入れてもらえません。
が,同じ病気を持った人が使用しにくい歯間ブラシを使用しよくなった例を話すと 受け入れやすいようで,使いにくい手でやってくれることが多いようです。
そしてそれがなんらかの利益をもたらしてくれればモチベ−ションとなり理論立てた指導も聞いてもらえるようになりました。



川上 ちひろ(養護教諭)
エピソード1
今は成人している姉妹の小学生の頃の話です。
姉 まじめな性格で食事の後にはきちんと歯磨きをしている。(A型)
妹 結構おおざっぱ。歯磨きをしているところを見たことがない。
姉は疑問に思いました。「どうして私はちゃんと磨いているのに歯医者にかよわなくてはならないのだろう。妹なんてちっとも歯を磨かないのに虫歯1本ない。なぜ?」
学校での歯科検診の結果をもらってくると 姉 歯医者さんに行きましょう
妹 異常なし なんですいつも。
しかも妹の方が好き嫌いが多い。にんじん,トマト,ピ−マン挙げたらきりがないくらい。
それなのにどうして?納得がいきません。
でも姉は一つ気が付いたことがありました。それは口臭です。朝起きたときの妹の口がとてもにおうのです。妹はこのことをとても気にしていました。姉の虫歯は歯医者で治してもらったのでよかったのですが妹の口臭はよくなりませんでした。他の人から「口がくさい」 といわれている妹を見て少しかわいそうに思いました。そして今になって歯の勉強をしたところ歯磨きで虫歯,歯肉炎,口臭が予防できるとのことで姉は妹にそのことを言いました。そしたら口臭はあまり気にならなくなってきました。姉が虫歯にならなかったのは今でも不思議ですが歯磨きって大切なんだと思う姉です。

エピソード2
姉の小学生の時の話です。学校で「明日は歯の勉強をするので手鏡をもってきてください」 といわれました。そこで何を思ったのか姉は手鏡を虫眼鏡と思い込んでしまいました。
それでわざわざおもちゃ屋にいきむしめがねを買ってもらいました。しかも妹の分と2本も。親は「鏡でしょ」というのに私は「絶対虫眼鏡」と言い張りました。
次の日学校にいった姉が恥ずかしい思いをしたことは言うまでもありません。
だって虫眼鏡なんて誰一人もってきてないのですから。
染め出しをして歯磨きの仕方を教えてもらうという内容の授業だったのですがどこでどう 思い違えたのか「歯を鏡に映して見る」のではなく「虫眼鏡で拡大して虫歯菌をみる」 と勘違いしてしまったのです。(早とちり,おっちょこちょいの性格は今でも直っていません)そんな思い出の虫眼鏡は2本とも大切にしまっております。








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