さて,話しは代わりますが,サメは,たった一か月ですべての歯が生え代わります。
でも本当に,何度も生え代わる歯のほうが良いのでしょうか?
人間は,魚類から両生類(カエル),そして爬虫類(ワニ・ヘビ)を経て哺乳類に進化してきました。
この間約45億年。
この時の流れのなかで,必然性があったからこそ,生え代わらない歯が誕生したと考えられます。
それではサメの歯の弱点とは何でしょう?
実は,何度も萌え代わる歯(多生歯性)こそが弱点なのです。
何度も萌え代わる歯は,別の表現をしますと,「すぐ抜ける歯」すなわち「歯の根のない歯」でもあるのです。
歯の根は,木の根と同じであり,なければ台風で倒れてしまいます。(注:これが,爬虫類までの歯の特徴。)
そう言えば,魚は,一度に何万もの卵から稚魚が生まれます。
ところが人間は,一人しか一人の赤ちゃんしか生みません。魚は,生存競争が厳しいからこそたくさんの稚魚を生む必要があるのです。
何度も萌え代わる歯も同じ理屈です。数が多いから良いというわけではないのです。
一方,哺乳類の歯には,歯の根・歯槽骨・歯根膜があります。
だから、哺乳類の歯は一度しか萌え代わらることができないのです(一生歯性)。
(注:唯一の例外 ワニは歯槽骨があり,槽歯類に分類されています。ワニは爬虫類の進化形なのです。)
(注:実は,恐竜にも歯槽骨が存在していました。恐竜は,当初大型の爬虫類だと思われていましたが,歯槽骨や歯根らしきものが存在するので,爬虫類と哺乳類をつなぐ未知の生物であることがわかりました。)
歯根や歯槽骨があることは,抜けにくい歯であることを意味しています。
歯と歯槽骨の関係は、電球とソケットの関係と同じです。だからこそ噛んでも容易に抜けないのです。
ところで,ご飯の中に砂粒が入っており間違って噛んだら,とっさに口が開きます。
これは歯の防衛作用で,一定以上の力がかかると歯が壊れてしまうからです。
この役割をするのが歯根膜で,歯と歯が埋まっている骨をつなぎクッションの役割を担っています。
ヒトの歯は,一度しか萌え代わらないが、大切にすれば一生使えるようにできているのです。
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