登場人物紹介
歯磨き博士博士
はてな?小学校の歯の校医。はてな小学校の子どもたちが,一生,白いきれいな歯を持ちつづけるよう,むし歯や歯グキの 病気の予防について話をする。
ケイちゃんケイちゃん はてな?小学校の6年生。歯磨き博士に歯について質問する。




ケイちゃん
ケイちゃん
緩衝作用とは,どんなものですか?
歯磨き博士
歯磨き博士
例えばヒトが生きていくためには,多くの酵素が必要だ。これらの酵素が働くために血液のpHは,7.35〜7.45(正常動脈血)の弱アルカリ性に保たれている。PHが6.8以下,7.8以上では,もはや生命保持が不可能となる。

例えば,清涼飲料水にはリン酸が含まれるためpHは3〜4だが,これらを飲み吸収されて血液が酸性になると,さまざまな問題が起こる。しかし実際には,飲んでも体液のpHはほとんど変化しない。

これはヒトの体は,酸やアルカリが加えられたときに,pHを正常域に保とうとする性質があるためだ。これが緩衝作用だ。血液のpHを調節している主なメカニズムは3種類ある。第1は,呼吸により炭酸ガスの放出を調節する。第2は,排尿により酸性物質を体外に出すことにで調整する。第3番目に,重炭酸塩などの物質で血液中の酸を中和させる。この重炭酸塩が,緩衝物質として働く。

ヒトの唾液にも,緩衝作用があり,唾液の緩衝作用の95%は,重炭酸塩系によるものだ。








緩衝作用大実験!
歯磨き博士
歯磨き博士
それでは,唾液の緩衝作用がどれだけ素晴らしいものであるか実験をしたので, クイズを出してみよう! まず,蒸留水を5CC用意する。PHは,約7.0だ。ここに0.1N(規定)の強塩酸(pH約1.0) を0.2cc加えたら,pHは約2.3になった。(注:計算上では2.4になる)
資料1

それではボクの唾液5cc(pH約7.2)に,同じ量の塩酸を加えたらpHは, どの位になるだろう?
資料2
   1:pH3.0
   2:pH4.0
   3:pH5.0
   4:pH6.0



ケイちゃん
ケイちゃん
化学は,苦手でしたから…。
歯磨き博士
歯磨き博士
正解は,約pH6.0になった。
資料3
ケイちゃん
ケイちゃん
蒸留水に比べてpHが,ほとんど落ちませんね。 唾液の緩衝作用って,素晴らしいのですね。
歯磨き博士
歯磨き博士
もう一つ,クイズを出してみよう!


それでは,塩酸を加えてpH2.3になった蒸留水に,水を加えて唾液と同じpH6.0に するためには,どの位の水が必要だろうか?
資料4
     1:5ml
     2:50ml
     3:500ml)
     4:5リットル(5.000ml)
ケイちゃん
ケイちゃん
数字を見ると,嫌になってしまいます。
歯磨き博士 歯磨き博士 正解は,5リットルだ。
資料5
ケイちゃんケイちゃん ヘエー!5リットルも加えなければならないのですか!!まさに唾液は,魔法の水ですね。 ところで“重炭酸塩”とはどんなものですか?わかりやすく教えてください。

歯磨き博士
歯磨き博士
ヒトは,酸素を吸って,二酸化炭素を出す。酸素を取り入れてエネルギ−に 変換するのは,体を構成する細胞であり,それぞれの細胞は二酸化炭素を排出する。 細胞から排出された二酸化炭素は血液中に溶ける。

ここで炭酸脱水素酵素によって  CO2+H2O→H+ + HCO3-の形で血液中に存在する。

そして肺では同じ酵素によってH+ + HCO3- →CO2+H2O となり肺から二酸化炭素が 排出される。 このHCO3-が重炭酸塩であり,血液中に存在する。
ケイちゃん
ケイちゃん
ちょっと難しいけれど,細胞から排出される二酸化炭素が重炭酸塩のル−ツなのですね。 なんとなくわかってきました。







安静時唾液と刺激唾液
歯磨き博士
歯磨き博士
唾液には,刺激唾液と安静時唾液と二種類ある。唾液緩衝能テスト(CAT21Buf) では,刺激唾液を利用する。
ケイちゃん
ケイちゃん
刺激唾液とは,どのようなものですか?
歯磨き博士
歯磨き博士
刺激唾液とは,食物を噛むことにより分泌される唾液だ。刺激唾液の多くは,耳下腺 から出るサラサラした唾液(漿液性唾液)だ。
ケイちゃん
ケイちゃん
だからこの試験では,ガムを噛むのですね。
歯磨き博士
歯磨き博士
そうだよ。唾液をたくさん採取できるから有利だ。 一方,安静時唾液(非刺激唾液)とは,ジッーとしている時の唾液だから量は少ないし, 多少ネバネバしている。
ケイちゃん
ケイちゃん
安静時唾液を採るためには,時間がかかるのですね。 ところで刺激唾液と安静時唾液では,むし歯になりやすさが異なるのですか?
歯磨き博士
歯磨き博士
刺激唾液の方が,重炭酸塩が多く含まれている。唾液腺は,ちょうどブドウの房の形 をしており,ブドウの実が腺房で,枝の部分が導管にあたる。 腺房の重炭酸塩は,導管を通過するときに再吸収される。だから安静時唾液には, 重炭酸塩が少なく緩衝作用も非常に弱い。 ところが刺激唾液では,大量に分泌されるので再吸収される前に導管を通過する。だからたくさんの重炭酸塩が含まれる。ちなみに,刺激唾液は安静時唾液の20〜30倍程度緩衝作用が強いとされている。
ケイちゃん
ケイちゃん
むし歯は,睡眠中に出来ると言いますが,唾液の量が減るだけではなく緩衝作用も弱い。だから寝ている間にむし歯になりやすいのですね







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